「都市インフラの静かな危機—モルタル剥離と金網設置の必要性」

モルタル吹付工の剥離落下対策における金網設置工事の重要性


近年、老朽化したインフラ構造物におけるモルタル吹付面の剥離・落下事故についての問い合わせが増加傾向となっています。特に切通しトンネルや擁壁、法面などに施工されたモルタル吹付工は、経年劣化や地震、凍結融解などの影響を受けやすく、剥離による落下物が通行人や車両に被害を及ぼすリスクが高まっています。


こうしたリスクに対処するために注目されているのが、「金網設置工事」です。本記事では、モルタル吹付工の剥離落下に対応する金網設置工事の目的、施工方法、注意点、そして今後の維持管理のあり方について詳しく解説します。


なぜモルタル吹付工が剥離・落下するのか?


モルタル吹付工は、コンクリート構造物や法面の表面保護、浸食防止、美観向上などを目的として施工されます。しかし、以下のような要因により、時間の経過とともに剥離や浮きが発生することがあります。


施工時の不良:下地処理不足や養生不良により、モルタルが十分に接着しない。


経年劣化:紫外線や雨水、凍結融解の繰り返しにより、モルタルが劣化。


地震や振動:構造物の揺れや交通振動により、モルタルに微細なクラックが発生。


水分の侵入:ひび割れから水が浸入し、内部で膨張・収縮を繰り返すことで剥離が進行。


これらの要因が複合的に作用することで、モルタルが浮き上がり、最終的には剥離・落下に至るのです。


金網設置工事の目的と効果

モルタルの剥離・落下を完全に防ぐことは困難ですが、落下による被害を最小限に抑えるための対策として「金網設置工事」が有効です


主な目的

落下物の飛散防止:剥離したモルタルが地上に落下するのを防止。


第三者被害の防止:歩行者や車両への直撃を防ぎ、安全性を確保。


応急措置としての活用:全面補修が困難な場合の暫定的な安全対策。


施工手順とポイント


金網設置工事は、現場の状況や構造物の形状に応じて柔軟に対応する必要があります。以下は一般的な施工手順です。


現地調査・点検


剥離の範囲や浮きの有無を打音検査や目視で確認。


足場の設置


親綱が設置できない箇所で高所作業が必要な場合は、安全な足場を設置。


作業員の安全確保が最優先。


アンカーの設置


金網を固定するためのアンカーを所定の間隔で打設。


コンクリートの健全部に確実に固定することが重要。


金網の設置


金網をアンカーとワイヤに固定し、たるみが出ないように張る。


継ぎ目部分は重ね合わせて結束線で固定。


仕上げ・確認


全体の張り具合や固定状況を確認。


落下物が金網に引っかかる構造になっているかをチェック。



維持管理と今後の課題

金網設置工事はあくまで「落下防止対策」であり、根本的な補修ではありません。そのため、定期的な点検と維持管理が不可欠です。


定期点検の実施:年1回以上の目視・打音検査を推奨。


金網の劣化確認:腐食や破損がないかをチェック。


モルタルの状態把握:浮きや新たな剥離が進行していないかを確認。


また、将来的には全面的なモルタルの撤去・再施工や、FRP(繊維強化プラスチック)などの新素材を用いた補修工法の導入も検討すべきです。


まとめ


モルタル吹付工の剥離・落下は、放置すれば重大な事故につながる可能性があります。金網設置工事は、そうしたリスクを低減するための現実的かつ即効性のある対策です。


しかし、金網の設置はあくまで「応急措置」であり、長期的には構造物の健全性を保つための抜本的な補修が求められます。インフラの老朽化が進む中、私たち施工業者や管理者には、安全・安心な社会を支える責任があります。


今後も技術の進化とともに、より効果的で持続可能な維持管理手法を模索し、地域社会の安全に貢献していきたいと考えています。